蚊帳へくる故郷の町の薄あかり 中村草田男

 

作者はもう故郷の住人ではない。そのことさえおさえておけば、自ずと句意は伝わってくるだろう。蚊帳はもうどこにも見かけないが、中に入るとなぜかほっとしたものである。明かりを消しても、仄かな町の明かり。いつ帰っても故郷は優しい。(『長子』1936年)(K.K.)