船がせっかく着いたのに、あいにくの雨。観光地ならどこにでもありそうな光景です。島に観光にきて、運悪く雨が降って来ただけのことかもしれません。でもどこか不思議。ありそうなことを書きながら、現実が少しだけずれる瞬間をとらえる。これこそ詩人のセンスなのです。傘ゆきわたる、ということは傘を配る人物がいるのです。その人物の指揮のもと、これから全員で何かをするような気配を感じます。さて、この一行、こんな孤島で何をするのでしょうか。いったい何が始まるのでしょう。「配られる」ではなく「ゆきわたる」としたところにも、作者の言葉のセンスの良さを感じます。 (「増殖する俳句」HPより)(北野和博)