蛍に水吹いて唇さみしくす  鈴木真砂女

蛍は成虫になると水しか飲まない。二週間ほどの短い命を、水だけで灯し続けるのだ。一見意味を取りにくい句だが、霧吹きで水を与えたあとの唇の形。作者が情熱的な人だったことに思いを馳せると、「さみしくす」に込められた作者の気持ちは、自ずと解けて伝わってくる。(『日本大歳時記』)(K.K.)