階段を濡らして昼が来てゐたり 攝津幸彦
無季俳句ですが、皆さんはこの句に季節を感じませんか。「昼が来てゐたり」のところに私は強い日差しを感じます。日差しの強さで作者は昼が来たと思ったのです。季節は夏です。外階段の影が短く濃いから昼だと分かったのでしょう。ということは、階段を濡らしたのは雨、夕立のような強いにわか雨でしょう。作者が知らぬ間にざあ、と降って止んだのです。ということで、もう一度整理しなおします。作者が室内から外に出ると、外階段が濡れている。知らぬ間ににわか雨が通り過ぎていたのだ。でももっと作者の印象に残ったのは、いつの間にか昼がきていたこと。まるで雨が昼を置いて行ったように。難解な句ではありませんが、階段を屋内と思って読むと迷路に入ってしまいます。(『現代俳句協会HP』現代俳句データベースより)(北野和博)