七○二頁に蜘蛛の子の死骸 杉浦圭祐
掲句の読みどころは、開いたページとせず、具体的に七○二頁と書いたところでしょう。七○二という数字には分厚い本という以外に意味はなく、五字音の中から選んだのかも知れませんが、具体的に書くことでリアルになります。(フィクションだと云っている訳ではありません。)さて、開いた本のページに押し花ならぬ干からびた蜘蛛の死骸。記憶には無いけれど、多分押しつぶしたのは自分です。ということは、自分は以前にも同じページを開いていたのです。これまた自分の記憶には無い事です。記憶の断片の様に、哀れな蜘蛛の子はそこに横たわっています。(『現代俳句歳時記』学研)(北野和博)