ハンカチを返せず駅に来てしまふ 岡本久也
え、どうゆうこと。暫く考えるとストンと意味がわかる。これも俳句を読む楽しみです。気になる人がハンカチを貸してくれたんですね。作者は男性ですが、主人公を男性と読む必要はありません。そこのところは読者がご自由にお楽しみください。主人公が女の子なら、泣いてしまったのですね。泣いた理由は。駅から旅立つ人は。男の子なら、前に借りたハンカチを返そうと、アイロン当てて鞄に入れているかも知れません。返す時に言う台詞も考えているけれども、うまく切り出せないまま駅に来て。もう時間がない。チャンスだ、頑張れ。(『沖』2001年9月号)(北野和博)