掲句は中央に「山ほととぎす」と名詞の季語を配し、上の句と下の句、季語で分断された五文字の言葉二つで俳句が構成されている。それでいて、句がバラバラにならずに纏まっている点に作者の力量のすごさを感じてしまう。ほとどぎすの鳴く様を「ほしいまま」とした表現の妙に目が行きがちであるが、この句を支えているのは「谺して」である。凡人なら「ほしいまま」のイメージを強調するために上の句を「一山を」とか「全景を」とかになってしまうところ、「谺して」によって、イントロから句に深い奥行きと質感を与えているのである、(『現代俳句歳時記』実業之日本社)(北野和博)