春嵐埠頭突端より追えず 鬼頭文子

 

 

第一回角川俳句賞受賞作より。「夫、巴里に発つ」との前書きがあるが、俳句は前書き不用で鑑賞したい。ということで、頭をリセットして前書き無し、先入観なしで鑑賞しましょう。作者が追いたいものは、一義的には春嵐であり、二義的には春嵐に乗って去っていくもの。春嵐に乗って去っていったものとは何。幼き日の夢、それとも大切な思い出。そんな風に想像が膨んでゆく。単身赴任の夫と読むと、詩はぶち壊しである。(『戦後の俳句〈現代はどう詠まれたか〉』楠本憲吉 1966年教養文庫)(K.K.)