末黒野の集めてゐたる喉ぼとけ 小形さとる
末黒野(すぐろの)とは、野焼き跡の黒く焦げた野のことであるが、戦争を経験した世代では、空襲の焼け野原のイメージと重なる様だ。掲句の「喉ぼとけ」はいわゆる喉の前の喉ぼとけではなく、斎場で遺骨を拾う時の仏型をした骨(第2頸椎)の事であろう。そのまま読めば末黒野が骨拾いをしているように読めるが、ここは末黒野において、「誰かが」集めていると読んだ。その「誰か」は、きっと多くの死を悼んでいるのだろう。イマジネーションの句である。 (『槐』2001年6月号)(K・K)