躁の茂り鬱の繁りや昼深し 奥村富久子

 

 

「茂り」は夏の草木が茂ること。例句は草よりも木の方がピタッとくる。日差しを受けて明るく風にそよぐ姿は「躁」。日陰で静かに木下闇など抱えている姿はまさに「鬱」。どちらも私達が普通に目にする夏の木立の姿であるが、早朝や夕方なら、そういう見え方はしない。光溢れる夏の昼だからこそ、そう見えるのである。(『現代俳句協会編現代俳句歳時記』学研)(K.K.)