金亀子擲つ闇の深さかな 高浜虚子

 

 

虚子の代表句として、あまりにも有名。私のこの句との出会いは高校生の時、国語の教科書だった。当時は「なげうつ」とひらがな表記されていたため、私は、迂闊にも「投げ打つ」地面に叩きつけるイメージを想起していた。実際は「私財を擲つ」の「なげうつ」。辞書で意味を引くと。捨てる、惜しげもなく差し出す、放棄して顧みない、など。人の動作を表す言葉ではないが、実にうまく使ったものである。部屋に入ってきた虫を、さりげなくポンと外に抛ってやったのだろう。では、なぜ闇の深さを感じたのだろう。地面に落ちる音がなかったからである。(『五百句』)(K.K.)