夕焼の茶箪笥を父覗きけり 山尾玉藻

 

 

夕焼けに染まるということは、座敷に置いた茶箪笥であろう。覗いている父もまた夕焼けの中にいる。父は何かを探していたのだろうか。それとも茶碗を眺めていたのだろうか。何気ない日常であるが、作者の記憶に残ったのだろう。場面がくっきりと目に浮かび、妙に心に残る句である。(『火星』2001年9月号)(K.K.)