雪靴のとおり過ぎたる予約席 北野平八

 

 

観光地の大型レストランでの情景だろう。バスの団体客はどっと現れて、さっと帰ってゆく。そのための予約席であるため、次の団体客が来るまでは店の一角がすっぽりと空くことになる。掲句の雪靴の人物は恐らく地元住民であろう。観光客なら雪靴は履かない。常連だから、がら空きの予約席に目もくれず、奥の混雑ぎみの席へすたすたと歩いてゆく。靴に張り付いた雪を床に零しながら。情景が目に浮かぶよう。(『北野平八句集』富士見書房1987年)(K・K)