すらひにふれるとすればくすりゆび 荒木甫

 

 

ふつう物に触れるのは人差指です。なぜ薬指で触ろうと思ったのでしょう。おそらく作者はうすらひ(薄氷)に触れたことがないのです。でも氷だから容易に感触は想像できる。そこで、頭の中で触れる情景を思い浮かべてみたのでしょう。まだ触れてないから、人差し指に感触の記憶が残っていない。薬指で触れるイメージは、容易に成立した事でしょう。薬指とした点と、触れたとせずと仮定形にした点で、合わせ技で一本です。 (『鴫』2014年5月号)(K・K)