はつ蝉に忌中の泉汲みにけり 飯田蛇笏

初蝉の中で泉の水を汲むというのは、実に俳句的情緒のある行動だ。でも。「忌中の泉」となると、情景は一変する。この一言で、いわゆる俳句的抒情とはひと味違った、緊張感のある抒情が立ち上がる。「初蝉」「忌中」「泉を汲む」この三つの素材が、素材過多に陥らずそれずれが自己主張しながもバランスよく緊張感を保っている。なんだか理屈っぽくなってしまいましたが、この句の緊張感とバランスの良さ、伝わりますか。『日本の詩歌18』中公文庫)(北野和博)