風の日は風吹きすさぶ秋刀魚の値 石田波郷

 

 

波郷は、生活に根差した句(境涯俳句)を多く残している。風が吹いた日は漁が出来ないから秋刀魚の値が跳ね上がっている、という程の句意であろう。代表句の一つではあるが、境涯俳句的講釈を付け加えなければ、単なる駄洒落の句である。私は多少強引ではあるが、「値」を「値札」と読みたい。昔は魚屋の店頭では紙切れにマジックで値段を書いて、飛ばないように魚で重しにしていた。実景として読むと、新たに立ち上がってくるイメージがある。値札をみた作者の懐にも、風が吹きすさんでいたに違いない。(『現代俳句歳時記』ハルキ文庫)(K.K.)