ごはんつぶよく噛んでゐて桜咲く 桂信子

 

 

作者は意識してご飯をよく噛んでいたのではありません。花に見とれていて、いや花に見とれていたことも忘れて無我の世界にいて、ふと気が付くと、口の中に甘くなったご飯粒が残っていて、満開の桜が咲いていたのです。そうは書いていないが、そう書いてある。それを読み取るためには、ご飯つぶが甘くなるほど、作品をよく噛みしめましょう。(句集『草樹』1986年)(K.K.)