夜の辻のにほひてどこかプールあり  野村登四郎

 

都会は匂いに溢れている。いちいち反応してはいられないから、脳は気付かないふりをする。それでも、たとえば、空腹時に食べ物の匂いがすると、その食べ物の姿がくっきりと浮かんでくる。さて、例句もしかり。暗い夜の辻で、プール特有のカルキ臭を、作者の脳が嗅ぎ分けたということは。この夜はうだるような暑さだった、と深読みしてしまうほどの今夜の暑さです。(『角川春樹編現代俳句歳時記』ハルキ文庫)(K.K.)