落鮎の腹の小石を噛み当てぬ 浅川正

 

 

落鮎とは、産卵のために川を下る鮎。産卵後には力尽きて死んでしまう。喰っている鮎から小石が出て来たら、異物混入だと怒る御仁もいらっしゃるだろうが、そう思わないのが詩人である。腹の小石は生前の鮎が食べた苔に混じっていたもの。命を繋ぐために川を下ってきた鮎。歯の痛みとともに命の重さを感じたに違いない。(『雲の峰』2003年11月号)(K.K.)