夏の河赤き鉄鎖のはし浸る 山口誓子

 

 

写生句といっても、静止画ではない。「夏の河」という全景から入って、工場の荷揚げ用のホイストクレーンか何かの鉄鎖に沿って移動し、赤錆の一段と濃い水際で止まる。鋭利で鮮明な、写生句の極致。熱気や工場の喧騒まで伝わってくる。(『炎昼』1937年)(K.K.)