体内にきみが血流る正座に耐ふ 鈴木しづ子

妊娠しているなら、無理に正座はしないでおこうと思うのが普通です。無理な姿勢を避けた方が、胎内にいる「きみ」ためでもあるはずです。でも、主人公はそうは考えません。なぜなら、主人公にとって正座は試練なのです。これしきの試練は乗り越えなければ。だって、「私」と「きみ」には、これからもっと大きな試練が待ち受けているのだから。(『昭和俳句作品年表戦後篇』東京堂出版)(北野和博)