騎馬の青年帯電して夕空を負う 林田紀音夫

一見難解そうだが、決して難解句ではありません。「騎馬の青年/夕空を負う」というこの句の基本的な構図は、写生句として誰でも目に浮かぶでしょう。問題は「帯電して」、をどう読むか、この一点だけです。文字通り騎馬で衣服がこすれて静電気がたまっているのでしょうか。それなら相当な観念句ですね。はたまた、「帯電して」で、思春期の青年のとげとげしさを暗喩しているのでしょうか。いやそれなら、「騎馬の青年夕日を負いて帯電す」という具合に、暗喩が映える構図にするでしょう。では、「帯電」の正体は。青年の体に夕陽が隠れて、青年のシルエットになった輪郭が発光していることを、帯電と表現したのですね。なかなか見事な描写です。『昭和俳句作品年表・戦後篇』東京堂出版)(北野和博)