むかご飯端の一人に日が差して 摂津よしこ

 

 

 

これがスパゲティーを食べていたなら俳句にならない。むがご飯を食べるということは、山の中の食事処であろう。旅の仲間の一人に日が差している。ということは、窓があって山の風景も見えているに違いない。もちろん、日に当たっている一人はそんなことは意に介さず談笑しながらむかご飯をほうばっている。誰も気に留めない小さな旅の光景が作者には愛おしいのだ。(『夏鴨』1985年)(K.K)