想像の水母がどうしても溶ける 池田澄子

主人公は水母を想像したいのだが、頭に想い浮かんだ途端にその水母は溶け始める、何度も想像しなおすが、どうしても溶ける。同じ経験をした人は多分いないだろうが、同じような経験をした人は多いのでは。例えばある人の顔を思い浮かべようとすると、途中から別のある人物の顔が浮かんできたり、晴れた海を想像したら、曇り空がうかんできたり。私の場合は眠りにつきかけた夢へと続くイメージを意識がコントロール出来ずに目を醒ますことが多いが、みなさんはどうだろう。掲句は読者の意表を突きながらも、思い付きだけの作品ではない。その奥にあるリアルさが、作品に存在感を与えている、『池田澄子句集』現代俳句文庫ふらんす堂)(北野和博)