たまさかは濃き味を恋ふ雲の峰 正木浩一

「たまさかは」は、「偶さかは」で、ごくたまには。普段は薄味を好んでいるのに、雲の峰を見ていたら濃い味付けが食べたくなった、取り合わせの妙の句、と普通に解釈して終わるつもりだったが、どうも内容に対して句の佇まいが上品すぎるのが気になる。「たまにこってりラーメン食べたい」くらいの軽めの句に、この上品な古語「たまさか」を使うだろうか。食欲なら「欲す」となるところを「恋ふ」としている点も読み落としてはならない。では作者が作品の裏に秘めた「濃き味」とは、何だろう。幼き日々の母の味付け、はたまた、なりたかった自分、大冒険、それとも今一度の激しい恋・・・ちょっと拡大解釈し過ぎたかな。『詳解俳句古語辞典』学研)(北野和博)