みなもとの水の香ふかき更衣 岡本眸

 

 

「更衣」は衣更え。まず立ち昇るのは若葉の清々しい香り、水源の水の透明感と夏のいで立ちの私。やがて、もう一つ別の映像が次に立ち昇ってくる、今度は部屋で衣装ダンスを入れ替えている私。畳んだ衣装に残る私の匂い、家族の匂い。それは時間をさかのぼり、記憶の源へと私を導いてゆく。現実とメタファーを見事に交差させた作品。(『朝』1999年8月号)(K.K.)