蝌蚪の上キューンキューンと戦闘機 西東三鬼

 

 

戦闘機はグラマンでキューンという音は急降下して迫ってくる音である。急降下する目的は機銃掃射である。機銃掃射の場所は軍事施設でも都会でもなく、蝌蚪が棲むのどかな田舎である。ということは、機銃が狙っているのは民間人でありおそらくは女子や子供である。戦争末期には疎開先でもそんな光景があったのだ。しかし、そのような凄惨な画を切り取りながら、掲句がどこかユーモラスで戯画的な雰囲気を醸しているのは、この句には観察者の視点をとおしていない、つまり写生句ではないからだろう。緊迫した地上と水面を隔てた平和な蝌蚪の世界の対比が読みどころ。(『現代俳句歳時記』実業之日本社)(K.K.)