父の声今も雨中のかたつむり 大井雅人

 

切れ字の場所によって味わいが変わる不思議な句。まずは先入観なしに読んでください。次に、「父の声」の後で切ると、父の声を聞きながらさっき雨の中で見たかたつむりを思い出している句。「今も」の後で切ると雨中のかたつむりをみつめながら亡くなった父の声を想っている意味になる。「雨中の」の後で切ると父が雨の中で作業をしている声が聞こえて、かたつむりが窓から見えている、と云った意味合いになる。それぞれ、違った味わいがあるが、私は「今も」の後かなあ。みなさんはどうですか。(『新版俳句歳時記』角川文庫)(K.K.)