むらくもの動くと見れば寒の鯉 鷹羽狩行

 

 

寒鯉が集まってじっとしていた様子を、むらくも(叢雲)と例えたのだろうか。いや、恐らくは水面に映った雲だろう。鯉が動いたとは書いていないが、水面の雲が動く(水面が揺れる)ことで、それを表現しているのだ。刈りこまれた言葉の中に、多くの情報が隠されていて、しかもシンプルな表現なので、詰め込んだ感じがしない。これこそ俳句の醍醐味だ。(『狩』1999年2月号)(K.K)