鰯雲日かげは水の音迅く 飯田龍太

鰯雲の空は高い。眺めていると広大な世界にひとり居るよう。そこから日かげに一歩踏み入れると、急に世界が近づいたよう。さっきまで遠くを流れていた水音も、すぐそばをせわしなく流れている。掲句の鑑賞のポイントは、「鰯雲」のところで、空の高さをしっかりと感じることでしょう。(『昭和俳句作品年表戦後篇』東京堂出版)(北野和博)