てのひらの硬貨のにほひ氷菓子 後藤志づ

この句を読むまで気に留めなかったが、硬貨には匂いがある。あの錆びのようなどこか懐かしい金属の匂い。この子はぎゅっと硬貨を握りしめていたから、てのひらに匂いが沁みついていたのでしょう。この子とは、もちろん幼かったころの自分です。(『あを』2003年9月号)(北野和博)