冷し馬馬首ともすれば陸に向く 山口誓子

 

馬は汗をかく。夏場運動した後などに触れると、びっしょりと濡れている。夏の夕方に馬を海や川に連れて行って洗う。馬は臆病な動物である。のんびり沖など眺めてはいない。敵を見つけたらいつでも逃げ出せるように、視線をいつも陸に向けている。生きるための本能は簡単には消せない。それでもこんな句も。「冷し馬の眼に遥かなる帆がすすむ 内藤吐夫」(『新版俳句歳時記夏の部』角川書店編 )(K.K.)