ただ過ぎし道にいろなく蛇苺 森谷彰

 

 

「ただ過ぎし」を、私は徒歩ではなくバスの車窓からの風景と読みました。つまり眺めるでもなく通り過ぎた風景のなかに蛇苺も含まれていた、と。蛇苺は赤いから、通り過ぎてもなんとなく、記憶に残っていたのでしょう。気配がないから「いろなく」。徒歩と読んだ人は、「いろなく」を熟す前の青い実と解釈した事でしょう。(『銀化』2000年9月号)(K.K.)