蛇を見し午後を過去とし夜の帯 岡本眸

 

 

蛇を見た記憶はなかなか消えない。単に不気味という言葉では説明できない、見てはいけないものを見てしまったような、後味の悪さが残るのだ。主人公も一応過去とはしているが、記憶から消えそうにないから過去としているのだ。帯をたたみながら、主人公の心の中に、また何かが蠢いている。時制を午後と夜とに使い分けているのが実に効果的である。(『現代俳句歳時記』実業之日本社1973年)(K.K.)