印泥の天地返しや走り梅雨 林裕子

 

 

走り梅雨は、梅雨入り間近の雨がちな天候のこと。印泥とは朱肉が普及する前に使われていた、例の赤い粘土みたいな、あれです。印影は鮮やかだけれど、放っておくと乾いてしまいます。「天地返し」とは、最初何のことやらわかりませんでしたが、こんな言葉をよく思いつきましたね。走り梅雨のイメージとぴたりとマッチします。梅雨ではこうはマッチしません。(『風土』2003年9月号)(K.K.)