雨晴れてもとのところに春の山 田村木国

 

 

一見衒いもなく面白みもない作品だが、なぜか目に留まった。あるべきものがそこにあるだけで感じる安らぎとでも言おうか。この山は作者が幼少期から見馴れた山なのだろうか。雨が晴れて真新しい山が見える。真新しい山だけれど、いつも見馴れた懐かしい山。私はそんな風に掲句を味わった。蛇足かもしれないが、掲句は昭和21年発表。戦争という大雨が過ぎた山(日本)というメタファーの作品としても鑑賞したい。(『昭和俳句作品年表・戦後篇』東京堂出版)(K.K.)