傘よせて話す一事や花の冷 植松安子

 

 

道でたまたま出合っての立ち話でしょうか。そう読むと「一事」は世間を騒がせる大きなニュースか、ご近所的に重要な話題と読めます。そうでないと冷たい雨の中、わざわざ傘寄せて熱心に話し込んだりしません。シチュエーションを変えましょう。集会か式典で集まっているとしたら。「一事」で、時間待ちの四方山話で一つの話題に話が弾んでいる様子が伝わってきます。季語は「花冷」。どちらの読みがふさわしいかは、云うまでもありませんね。(『朝』2005年6月号)(K.K.)