五月なかばの鉛の空母しんと浮く 林田紀音夫

 

 

鉛は鉛色の意味だが、たしかに軍艦のカモフラージュ色は鉛のように見える。空は曇って、海は凪いでいる。空母はもちろん海に浮いているのだが、まるで宙に浮いているように見える。空母は登場するが、ここに硝煙のきな臭さはない。静逸な風景である。季語「五月」のマッチングもさることながら、「なかば」がとても効いている。(『現代俳句歳時記』実業之日本社)(K.K.)