亡きものはなし冬の星鎖をなせど 飯田龍太

 

 

 

飯田龍太は三兄を戦争と病でなくしている。自解には「・・・こうした風景を見ると、矢張りまた亡くなった肉親を、わけても三人の兄達のことを思い出す。目尻を拭った。・・・」とある。「亡きものはなし」は、亡くなった者は亡くなった(逢うすべはない)、とも、亡くなった者などいない(否定の否定)、ともとれる。私は前者の解釈の方が肌にあいまた「鎖をなせど」との相性も良く感じるが、自解を読むと作句時の作者の心境は後者だったかも知れない。(『飯田龍太自選自解』講談社)(K.K)