汗ぬぐうそのてのひらに父の顔  近藤瑠璃

主語が私とは限らないという俳句の特性を上手く活かした句。私が汗をぬぐっていると思いこんで読んでいると、最後で父の顔が出て来てどきりとさせられる。いうまでもありませんが掲句は、父が自分の手で顔の汗をぬぐっている様子を私が描写しているのです。単に意外性のある表現を狙ったのではなく、労働にいそしむ父への労りの情が伝わってきます。(『現代俳句データべーズ』現代俳句協会HPより)(北野和博)