皺のばす朝顔の種つつむ紙 桂信子

 

 

種を包んでいた紙の皺を伸ばしているのではない。これから種を包むために、紙の皺をのばしているのです。それではなぜ、まだ包んでいないのに、紙に皺がついているのでしょう。恐らく、主人公は毎年同じ紙で朝顔の種を包んでいるのでしょう。引き出しには花の種の紙包みがいっぱいあって、他の種と区別するため、鉛筆で「朝顔」と書いてあったりして。掲句の中では朝顔の花は咲いていません。でも朝顔の種を包み紙から出して植えて、咲いたらその種をもとの紙に戻す。このいとおしい繰り返しの時間の中で、朝顔の花が恥かしそうに咲いています。ほら、見えてきたでしょう。(句集『新緑』牧羊社1974年)(北野和博)