秋雨の音なき音に目覚めけり 廣島啓子

 

 

日本人の美意識の根底にあるのは、気配の美学だと思っている。山の端が明るんで月が昇る気配、待つ人がやってくる足音、風が連れてくる次の季節の気配。言葉もまたしかり。言った言葉、書かれた言葉の外には、書かれていな沢山の言葉が、そして言葉に託した人の気持ちが隠されているのだ。今の日本人はそれを忘れかけているが、俳句の中では、気配の美学が今でも息づいている。例句もしかり。雨の気配の奥にあなたは何を感じますか。 (『雲の峰』2003年12月号)(K.K.)