秋水に落とし視軸を失へり 上田貴美子

 

 

視軸とは、眼底や水晶体と視界の中心とを結ぶ線。平たく視線と書かず視軸としたことで、句が活きている。秋の水に視軸を落とす前に、作者は何かを視つめていたのだ。それは輪郭のクリアなものだったに違いない。だからこそ、水に視線を移した時に視軸を失うように感じたのだ。作者が視つめていたものは何だろう、(『暦還り』角川書店)(K.K.)