生徒全員の前では厳しくても、放課後に職員室に行くと穏やか接してくれる先生って、確かにいましたね。でも、この句はそういう先生の優しさや人情を詠んだものではありません。その奥に主人公の少年の心の痛みが透けて見えるのです。寺山の作品は巧みに練られた虚構のドラマでありながら、時折作者が見えてきます。寺山の句は痛い。それにしても季語を大揚羽とは、うまいなあ。(『寺山修司コレクション』思潮社)(北野和博)