白蓮のうしろの紅蓮くづれけり 山尾玉藻

 

 

蓮の花は早朝に咲いて、昼過ぎには散るという。その様子を描いたものだが、手前の白蓮が実に良く効いている。この白と赤の対比により画面に奥行きが加わる事は言うまでもないが、同時に白=静、赤=動の対比の構図が生まれる。「くづれけり」が、散ってしまった様子ではなく、今まさに散る瞬間のように、読み手は感じるのだ。言葉とは何とも不可思議なのものである。(『火星』2012年8月号)(K.K.)