忘られぬ悲しさのあり春祭 大平保子

 

 

「春祭」とは特定の祭を指すものではなく春の祭の総称。忘れならないほどの悲しさとは、何だろう。具体的に書かれていないのは、俳句という表現形式の制約からではあるが、それがまた読み手のフィーリングとマッチする。もしかしたら他人目には些細な事かも知れない。でも祭というハレの日だからこそ、一層忘れならない悲しい思い出。類想句はありそうだが、春祭という舞台設定がなんとも儚く、この句に惹かれた。(『いろり』2000年5月号)(K.K.)