徘徊の妻の融けゆく冬満月 河内桜人

 

 

私の職場には市役所の有線放送が流れる仕組みになっているのだが、昼休みに人探しの協力依頼放送があり、たいていはその日の夕方に見つかったという報告が流れる。掲句を読んで、徘徊は昼間とは限らないのだと気づかされた。戸外から自分を呼ぶ声に素直に従う妻。冬満月に融けゆく妻に、作者は神々しささへ感じているようだ。(『京鹿子』2007年3月号)(K・K)